2050年のカーボンニュートラル実現に向け、住宅の省エネ性能に関するルールは大きく変わりつつあります。これから家を建てる人にとって、「どこまで省エネ性能を高めればいいのか」「将来も価値のある家にするには何が必要か」という点はとても重要です。本記事では、これからの注文住宅に求められる性能や選び方を紹介します。
2050年に向けて強化される住宅の省エネ義務化
省エネ性能の確保は、すでに「努力目標」ではなく「必須条件」になりつつあります。ここでは、これからの住宅がどのような基準を求められるのか、そのロードマップを整理していきます。2025年からすべての新築に省エネ基準適合が義務化
2025年度から、新築住宅すべてが現在の省エネ基準に適合することが義務となりました。具体的には、断熱等性能等級4が最低ラインとなり、断熱材の厚みや窓の性能など、これまでは各建築会社に任されていた部分が明確に求められるようになります。これにより「性能の低い新築住宅が世の中に出回ることを防ぐ」ことが大きな狙いとされています。
2030年にはZEH水準(等級5)へ段階的に引き上げへ
2030年には、より高い断熱性能を備えたZEH水準を新築住宅の標準にする方針が示されています。ZEH水準とは、等級5以上の断熱性と省エネ性能をもつ住宅のことです。つまり、これから家を建てる人は「等級4で十分」ではなく、「2030年基準を見据えて等級5を前提に検討するべき時代」に入ったといえます。
義務化は最終ゴールではなく“最低ライン”という考え方へ
義務化される基準は、住宅の性能の「最低ライン」です。将来のエネルギー価格の上昇や、住宅の資産価値を考えると、より高い基準を選んだほうが長期的なメリットが得られます。とくに断熱性能や気密性は、後から改善するほど費用がかかるため、建てる段階で高めておくほうが合理的です。
注文住宅はZEH水準以上を基本性能として検討する
義務化基準よりも上の性能を選ぶことが、これからの注文住宅にとっては当たり前になりつつあります。ここでは、ZEHが推奨される理由と、暮らしに与えるメリットを見ていきましょう。ZEHとは?断熱+省エネ+創エネでエネルギー収支をゼロに
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は、断熱性能を高めることでエネルギーのムダを減らし、高効率設備で使用エネルギーを抑え、太陽光発電などで電気をつくることにより年間の消費エネルギーを実質ゼロに近づける住宅のことです。「省エネ」と「創エネ」を組み合わせることで、これまでよりもはるかに効率のよい住宅になります。光熱費の削減と快適性向上というWのメリット
ZEH水準の断熱性能を備えた住宅は、夏の暑さや冬の寒さの影響を受けにくく、室温が安定します。冷暖房の効きがよいため光熱費の負担が減るだけではなく、部屋の温度差によるヒートショックのリスクも抑えられるのが大きな特徴です。毎日の暮らしで感じる快適さに加えて、健康面のメリットも注目されています。
太陽光発電と蓄電池で災害に強い暮らしへ
近年は災害による停電への備えとして、住宅の自立性が求められています。太陽光発電と蓄電池を組み合わせれば、停電時でも照明・冷蔵庫・通信機器などの電力を一定時間確保できます。このような電気を自宅でつくって貯める家は、災害時の安心感が大きく、これもZEHが選ばれる理由のひとつです。
次世代住宅LCCMや優遇制度を活用した賢い家づくり
ZEHよりさらに進んだ住宅性能も登場しており、将来的な価値を見据えるなら検討する価値があります。ここでは次世代住宅の考え方と、家づくりで利用できる制度を紹介します。建てるほどCO2を減らすLCCM住宅という選択肢
LCCM住宅(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス住宅)は、建設・住む・解体までの家の一生を通じて排出するCO2よりも、太陽光発電などで創出するエネルギー量を上回ることを目指した住宅です。「高性能住宅の最終形」ともいわれており、断熱性能や気密性能はZEH以上のレベルが求められます。初期費用は高くなりがちですが、環境負荷の小さい理想的な住宅として注目が高まっています。
補助金・税制優遇をうまく活用して初期費用を抑える
高性能な住宅はコストが上がりやすいですが、近年は国や自治体による支援制度が拡大しています。たとえば、ZEH補助金や長期優良住宅の税制優遇を使えば、建設費用の負担を軽減できます。住宅ローン控除の拡充もあり、高い性能を選んだほうが結果的に得になるケースも少なくありません。






